注射は痛くないの?-その1-

「おりこうにしないと、病院で注射をしてもらいますよ!」。よく聞くフレーズです。何気なく使っておられるようで、年配の方に多いように感じます。また、どこの医療機関でも耳にされていることでしょう。逆に「注射は痛くないよ」とか、「先生上手だから注射は痛くないよ」とかも、同じ状況でしょう。注射上手と言われても、(自分で上手と思っていたとしても)「いやそれほどでもないですよ」とは言えず、ましてや自分では上手かどうかは分からないので苦笑いしながら、ごまかして注射しています。ただ、いずれにしても子どもたちに「嘘をついている」ことに違いはありません。あたりまえですが、おりこうにしていても注射は必要ですし、どんなに上手でも注射は痛いのです。

一方で、注射時に怖がらず、また泣かない赤ちゃんも少なからず見かけます。赤ちゃんには、恐怖心はなく前回の記憶も定かではないのでしょう。もっとも、会場のあちこちで、他の赤ちゃんが泣いていれば別なようですが。以前(1997年)、「予防接種を受ける前に子どもに注射の意義を教えれば、子どもは泣かないか」という共同研究に参加したことがあります。予防接種時における子どもの恐れ行動を明らかにするため、日本外来小児科学会会員16施設でアンケートをとり解析しました。

注射時の反応は、「おとなしい」69.2%、「むずがってはいるが泣いてはいない」12.4%、「泣いているがじっとしている」14.4%、「パニック」4.1%であり、意外におとなしく注射を受けていることが分かりました。パニックに陥った子どもさんは、予防接種の種類、接種歴、接種時の環境などが影響していました。他の注射歴がある、予診中に既に泣いたり逃げようとしたりした方が、また予防注射針の大きい方が、そして周囲で泣いている方が、パニックに陥りやすいようでした。

その結果、「子どもにやさしい」予防接種を行うには、接種自体のハード面の改善だけではなく、接種会場の環境などソフト面の配慮が必要なことも、これらの解析の結果明らかになりました。事前に予防接種を説明したことは、子どもの恐れ行動には、残念ながら有意の差はありませんでした。しかしながら、エビデンスはなかったからといって、説明が必要ない訳ではないと考えます。やはり、ある程度の年齢の子どもさんには、予防接種をなぜするのか、保護者から事前に説明していただくことも必要であると考えています。また、普段から保護者の方が、子どもさんに「注射は痛いけれど、病気にかからないために必要だよ」と事前説明するように指導していくことも、接種医の仕事であると考えています。