ほんのちょっとしたこと

「麻疹」をどのように読みますか?「ましん」当たり前ですね。でも、私たちにとっては、当たり前のことでも、お母さんがたにとっては、「ましん」と「ふうしん」は、区別しにくいようです。小児科医として大先輩である、熊本の高名な先生は、ある会合で、「お母さんには麻疹と風疹の区別は難しいので、当院では、麻疹(ましん)という言葉は使わず、すべて『はしか』にしている」と発言されました。

私は、それまで漫然と「麻疹、つまりはしかですね」と言っていましたので、この発言にあっと驚き、またさすがと感じまして、この会合の後は院内での用語として「麻疹(ましん)」は使わず、「はしか」とすることにしました。我々医療機関にとっては、なんら苦もないことでも、一般の方には、決してそうではないこともたくさんありそうです。

「医療機関には摩訶不思議が多い」のかもしれません。予防接種に関してよくある質問に、接種間隔があります。「今日、三種混合(DPT)したので、次はいつ出来ますか?」、単純な設定の簡単な質問なので、ただ答えるだけにとどまり、あまり気にとめていませんでした。これも「麻疹(ましん)とはしか」の関係と同じく、我々には簡単でも、家族には区別しにくいことのひとつといえそうです。ある母親(以下、母)が担当医(以下、Dr.)に質問しました。
(母)「三混と、生ポリオの間は4週間空けるのでしょう?」
すると担当医が答えました。
(Dr.)「いいえ。三混は不活化ワクチンなので1週間で次のワクチンは接種可能です、でもポリオを先にすると、生ワクチンなので、次の接種は4週間空けなくてはいけませんよ」。
(母)「でも三混は、3~8週間隔で接種と書いてありましたよ」。
(Dr.)「それは、同一ワクチンの間の接種間隔です、他のワクチンとの間隔は、生(ワクチン)と不活化(ワクチン)で違うのです」。
あちらこちらで日常的によくありそうな会話です。逆に、DPT接種から他のワクチンヘは、1週間で出来るというところだけを読んで、2回目のDPTを1週間後に予約しようとした母親もおられます。お気づきでしょうか。家族にとっては、「生」や「不活化」(ワクチン)は、あまり興味のあることではなく、ワクチンには違いはないのです。

「予防接種と子どもの健康」に接種間隔は書いてあるでしょう、とは医療機関側の考えです。それよりも医療機関側が、家族は同一のワクチンと他のワクチンの接種間隔を混同することがあると認識すればよいことです。まだまだ、予防接種以外でも、これと同様の「ちょっとしたこと」はあると考えます。でもほんのちょっとで済むのか、大事に至るのかは、起きてみないと分かりません。善意であったにしても「ほんのちょっと」したことで、家族に誤解を与えてしまっていたということを、後で聞いてこちらがビックリしたことがあります。残念ながら医療機関側には「言い訳」をする手段はありません。日頃から家族の言動に「ほんのちょっと」でもよいから気をつけることが大切ですね。