本丸とお堀

私は、熊本に住んでいますので天下の名城と言われる「熊本城」は地元自慢のひとつです。加藤清正が築城して2007年で400年を迎え、2008年には最大の建造物である「本丸御殿」が落成しました。現在、熊本城の次なる100年に向けて、2008年より10年間を目処に、熊本城の復元整備を進めているところです。忍者になった気でお城を散策すると、敵に対していかに防いでいたかを気付かされ、面白いかもしれません。ぜひ熊本城へおいで下さい。

インフルエンザ予防接種のときに、小さな子どもさんにのみ注射を希望された家族がおられました。
家計への負担と、小さな子どもさんをおもんぱかってのことでしょうが、保育施設にも行っていない子どもさんのみの接種は、お城で言えば本丸御殿のみの防御であり、外堀も内堀もないのと同じです。瞬く間に敵に攻め込まれてしまいます。家庭において誰が一番重要か(偉いか)ということではありません。家庭をお城と考え、家来も城主も関係ないとすると、外部との接触が多い外堀担当は、保育施設や学校に通っているお兄ちゃん、お姉ちゃんでしょうか。お父さんも営業マンなどであれば、外堀担当かもしれません。
お仕事を持っていないお母さんや、引退して時々外出されるお爺ちゃん、おばあちゃんは、さしずめ内堀担当でしょうか。そして、外部との接触が全くない、本丸に居る城主が赤ちゃんとなるのでしょう。でもこのように、きっちりと防衛担当が(インフルエンザの予防接種が)出来ていれば、簡単には敵の侵入は(インフルエンザの流行は)ないかもしれません。

今度は、お城を「地域社会」と見てはいかがでしょうか。インフルエンザに限らず、日本では麻疹や風疹などの定期接種の接種率が低く流行が見られるのは、外堀や内堀の城壁に未完成部分が多いことと同じではないでしょうか。城壁があったとしても敵に打ち破られるのは、構造上5~30%と弱い部分があるからと分かっています。ましてや城壁すらなければ、自由に敵が侵入出来ます。ある学会で、「インフルエンザを学校で義務接種としていた頃は、高齢者の超過死亡が少なかった」という発表を聞いたことがあります。インフルエンザ予防接種を学校でしなさいとか言うつもりではありません。
子どもたちが外堀防衛隊でお城の中に居るご年配の方を守っていたのでは、ということです。同じようにご年配の方が接種することで本丸に居る「赤ちゃん」も守れることになります。予防接種はインフルエンザに限らず、自分が接種することで、まず外堀防衛隊となり、また防衛することで、自分を含めた城内の人々(地域社会)を守る可能性が高まります。数%の予防接種を拒否する方がおられたとしても、他の部分の防衛が出来上がっていれば、弱い部分が判明しているので、お城全体の防衛に貢献出来ることになります。

誰々の為に予防接種をしなさいというのではなく、自分のためと受けた予防接種が実はみんなの為にもなっており、またみんなが受けることで、自分の為にもなっていることを知ってほしいものです。
"All for Your Child, Your Child for All."
子どもさんの定期予防接種も忘れないようにしましょう。

※このレポートは2016年の熊本地震よりも前に執筆されたものです。