接種後の観察時間

執筆:医療法人松丸会 しまだ小児科 院長 島田 康 先生
(2006年執筆)

『予防接種と子どもの健康』には、「予防接種を受けた後の一般的注意事項」として「予防接種を受けたあと30分間程度は、医療機関(施設)でお子さんの様子を観察するか、医師とすぐに連絡をとれるようにしておきましょう。急な副反応はこの間に起こることがまれにあります。」と記載があります。ほとんどの先生方は、接種後は、そのようになされていると思います。また、確かに手元にいていただく方が良いようです。

以前、まだ小児用のワクチンの安定剤にゼラチンが使われていた頃の話ですが、当時の「ゼラチンアレルギー」の症例を経験された方は「手元に置いていてよかった、帰していたらと思うとゾッとする」と私に話してくれました。あってはならないのですが、あるかもしれない「副反応」に対しては、万全を期すため、接種後30分は自院内にいていただく方が、安全であると考えます。

ただ、その30分間をどのように考えるかで保護者の方にとっては「強いマイナスのイメージ」となるか「弱いマイナスのイメージ」となるかが分かれます。仕事の忙しい方であれば、この30分はもったいないと思われるかもしれませんね。でも中には、学校の宿題を持って接種に来る小学生もいます。また当院には、保育士が常勤しています。そして、場合によっては接種後に、「絵本の読み聴かせ」を実施することもあります。最近では、慣れた保護者の方は、この観察時間帯にお子さんと遊ぶようになられたようです。手元のおもちゃで一緒に遊んだり、絵本の読み聴かせをしたりされています。この時間にテレビを点けることはまずありませんし、「テレビを点けて」というリクエストもありません。保護者の方が数組で各々のお子さんと、遊ばれています。医療機関も物理的なスペースを取ったり、スタッフの人員を確保したりと、安全の為に必要な時間を確保する努力や工夫をしています。接種後の観察時間は安全の為には必要な時間です。「もったいない」という見方を少し変えてみませんか。

当院では、予防接種スペースには、絵本やオモチャを置いて、少しでも「怖さ」が軽減できるように工夫しています。そして、この観察時間を「すてきな30分」と銘打って、ゆったりと、お子さんと遊びながら過ごしていただいています。いつも仕事や家事で忙しい保護者の方も、多少は気持ちの上でゆっくりしていただき、「あっと言う間の30分」になって欲しいと願っています。

30分間のすてきな時間

予防接種の接種後30分の診察の時間は、お仕事や家事に追われるお忙しい保護者の方にとって貴重な時間です。でも私達は、日頃お忙しいからこそ、お子さんとふれあうこの30分間を大切にしていただきたいと思います。今日のこの30分間を、お子さんと向き合い有意義に過ごしてみられませんか?

病院なら30分安心して待つことができるね。
病院なら30分安心して待つことができるね。
絵本がたくさんあって楽しいな!
絵本がたくさんあって楽しいな!