子どもたちを守るために、何を優先しますか?

執筆:医療法人松丸会 しまだ小児科 院長 島田 康 先生
(2006年執筆)

さて、1歳半健診(集団)の会場です。元気のよい子どもたちが順番を待っています。そして診察が終わり、予防接種項目の確認に「母子健康手帳」を見ると、BCGとポリオ以外は接種が済んでいません。「どうして?」と保護者の方に聞くと、この質問を予想していたのか、不機嫌そうに「病気だったから」という答えが返ってきました。どこの地区でもそうなのかは分かりませんが、私が担当している地区の1歳半健診時の予防接種確認では、可能な予防接種が「ほとんど済んでいる」子どもと、この子のように「ほとんど済んでいない」子どもに二極化する傾向が見られます。そして済んでいない理由を保護者の方に尋ねると、「病気だったから出来なかった」という答えが多いようです。

同じく「体調がよいから予約したけど熱が出た」も、よく聞く話です。もし体調が悪く接種できなかったとしても、よくなったときに担当医に「いつから予防接種を受けられますか」と、その度に聞いておけば、確実に接種が済んでいたかもしれません。また「忙しかったから」という保護者の方もおられますが、子どもたちには聞かせたくない「ことば」です。生活の基盤ですから、仕事は大切です。でも子どもたちにとっては、病気から身を守るために予防接種を受けることも大切です。「日曜日や夜間に接種できれば」という声も耳にすることがあります。また実際実施している医療機関もあるかと思います。ただ個人の診療所では、万に一つの「事故」に備え、看護や事務スタッフが確実に居る通常の時間帯に実施したいと考えて、夜間休日は避けている医療機関の方が多いようです。

病気や多忙で接種を見送ってしまう保護者の方に、子どもたちの健康のために接種意識を高めて貰うことと、医療機関の接種時間を増やして欲しいとの要望に応えることはどちらも大事なことですが、子どもたちを守るために、本当に優先されることは何でしょうか?
医療機関側の話に目を向けると、就学時健診で、予防接種を確認しない医師が居るという話も、よく聞きます。でも本当だろうかと思います。定期接種の年齢が90ヵ月となっているのは、就学時健診からの余裕をみて決められている訳ですし、最後の勧奨のチャンスです。だから入学までに確実に受けていただくように、ほとんどの校医の先生方は指導をされていると信じています。

就学前に机を買いに行くのも楽しい作業ですが、その前に予防接種を受けてはいかがでしょう。そして、もうすぐ1歳の子どもさんには、1歳のバースデーケーキと思った時には、麻疹の予防接種も思い出していただきたいと思います。子どもたちを守るために、何を優先すればよいか考えてみませんか?