生理の量が多い、生理が長引く…
いつものことだから仕方がない、
と思って、あきらめていませんか?
でもそれは、
過多月経の症状かもしれません。
がまんしないで産婦人科の先生に
相談してみませんか。
監修:エルム女性クリニック 院長 佐藤 秀平 先生
生理中の出血量が正常範囲よりも多い状態を過多月経といいます。
過多月経は、仕事や家事、運動や社会活動など日常生活のさまざまな場面に影響を及ぼすことが知られています。
出血量を正確に測ることは難しく個人差もあるため、自分の生理の量が多いかどうかはわかりにくいものです。
これらの程度を超える場合を過多月経といいます。
過多月経の症状がある人は、出血による貧血(鉄欠乏性貧血)を併発することがあります。よくいわれる脳貧血(フラフラするような症状)と鉄欠乏性貧血などの血液が薄くなる貧血の症状は異なります。
これらの症状がみられる場合は、過多月経やそれを原因とした貧血である可能性が考えられるため、産婦人科で先生に相談してみましょう。
1) 塩崎宏子, 泉二登志子 : 日内会誌, 99(6), 1213-9, 2010
過多月経などの子宮からの異常出血には、子宮自体に原因がある場合と、子宮の機能や子宮以外に原因がある場合、そしてどちらにも原因がある場合があります1)。
1) Munro MG et al. : Int J Gynaecol Obstet, 113(1), 3-13, 2011
診察室での問診のあと、通常は内診や超音波検査、必要に応じてがん検診などを行います。
また、月経周期とタイミングを合わせて血液検査でホルモンの異常や血を止める働きの異常がないかを調べます。
もう少し詳しい画像検査(MRIなど)や病理組織検査を行う場合もあります。
検査結果を踏まえて、過多月経の原因が子宮や卵巣そのものにあるのか、それ以外の原因(とくに血液の異常など)によるものか、あるいは両者に原因があるのかを診断します。
過多月経の原因、重症度、妊娠の希望の有無など患者さんの考えに応じて、薬物治療や外科治療などを行います。血を止める働きの異常によるもの以外の過多月経の場合は、以下のような治療法があります。
子宮またはその一部の病変を手術で処置したり取り除いたりします。
子宮以外の原因のうち、血液の病気により血が止まりにくくなることで、過多月経の症状が現れる場合があります。具体的には、フォン・ヴィレブランド病、特発性血小板減少性紫斑病、血友病、白血病などが挙げられます。
なかでもフォン・ヴィレブランド病は、比較的頻度が高い(およそ100人当たり1人と推定1))遺伝性の病気です。 過多月経の人の13%がフォン・ヴィレブランド病と診断されたという報告もあります2)。ただし、症状に気づかず、診断されていない患者さんが多くいると考えられています。
フォン·ヴィレブランド病が疑われる場合は、産婦人科からの紹介により、血液の病気を専門に診る血液内科で診断や治療が行われることがあります。
フォン・ヴィレブランド病は、血を止めるのに必要なタンパク質の1つであるフォン・ヴィレブランド因子の量の低下や機能の異常により、血が止まりにくくなる病気です。
フォン・ヴィレブランド因子は
血を止める働きをする血小板が
傷口部分に集まるのを助けます
フォン・ヴィレブランド因子は
血を止める働きをする血小板が
傷口部分に集まるのを助けます
フォン・ヴィレブランド病では、過多月経のほかに、鼻血、歯茎の出血、あざができやすい、抜歯や手術、ケガで血が止まりにくいなどの症状がみられます。また、出産後に異常出血を生じる場合があります。
フォン・ヴィレブランド病の診断は、問診と血液検査によって行われます。 問診では、出血の症状や家族にも同様の症状を訴える人がいるかなどを確認します。
血液検査では、フォン・ヴィレブランド因子の量や機能などを調べます。
フォン・ヴィレブランド病と診断された場合は、通常の過多月経の治療に加えて、
●フォン・ヴィレブランド因子を含む薬剤の投与
●フォン・ヴィレブランド因子の放出を促す薬剤の投与
などが行われる場合があります。
1) Nichols WL et al. : Haemophilia, 14(2), 171-232, 2008
2) Shankar M et al. : BJOG, 111(7), 734-40, 2004
過多月経の薬物治療や外科治療にかかる費用は、原則、保険適用の対象となります。また、健康保険には一定の自己負担額を超えた分が払い戻される「高額療養費制度」があり、支給には申請手続きが必要です。詳しくは、お持ちの保険証を確認の上、記載されている保険者にお問い合わせください。
フォン・ヴィレブランド病の治療にかかる費用は、公的な医療費助成制度の「小児慢性特定疾患治療研究事業」や「先天性血液凝固因子障害等治療研究事業」の認定を受けることで、全額補助されます。申請の手続きなど、詳しくは、お住まいの地域の保健所にお問い合わせください。